このぐらいの季節にはあまりいい思い出がない

 真っ先に思い出すのは、キラキラしたゲーム会社での経験だけれど、どちらも熱い時期の湿気の思い出が強い。コンビニで朝食をとって喫煙してコンビニのトイレで排便するか会社の入っていたビルの1Fのトイレによってから行くか。始業30分前ぐらいに来ていたのは派遣のおじさんと別のチームの人たちだった。声優のような声でしゃべる女性たち二人がデバッグのチームにいた。でも朝はみな静かでテンションが低めだったように思える。隣の席の女性は、いつも始業時間1分前ぐらいに現れた。ギリギリまでトイレで化粧直しをしているのかもしれなかった。今にして思えば。もう一つの会社は、同棲している間に行っていたところだけど、朝はトイレによることはなかったし、もう喫煙もしていなかった。ただ、ビルのコンビニで飲み物を買っていくのだった。支給されたPCはMacbook Airで、袖机に施錠して入れてあるのをカギを開けて取り出す。自分が出社するのはやはり30分前ぐらいだった気がするけれど、プロジェクト全体でほとんどその時間に来ている人はいなかった。KPIの分析部隊のところからちらほら声がするぐらいだった記憶がある。私も好きだったIPタイトルのポスターやグッズが社内のあちこちにあった。夢に見た環境のように思えたのに、実際にそこで過ごす時間はひどく緊張を強いられてつらいものでもあった。昼は弁当の社内販売で済ます。さきほど書いた別の会社でも、昼は弁当の社内販売があった。みそ汁は無料の自販機から無限に出てくるのだった。こちらの会社の場合は、みそ汁まではなかったかもしれない。同じチームメンバーには昼飯を食べず昼休みをとらない人もいた。黎明期からいるとされる古参のフリーランスの人だった。恵比寿にマンションを買って住んでいると言っていた。金持ちみたいな話をする人が多い会社だった。不動産投資や仮想通貨の投資なんかをやっている人もいるようだった。入ってすぐに、チームのリーダーが来月やめると言い出した。入ってすぐにメンバーが一人辞めていた。チーム自体が存亡の危機にあるように思えた。残る人ともあまりそりが合わず、自分の能力も評価も厳しいものがある気がしていたら、ある日会社にいけなくなり、終わったと思ってエージェントに相談して辞めさせてもらうことになったのだった。仕事を辞めるたびに元カノは、しばらく休養したほうがいいと言ってくれた。けれど、仕事もしておらず家で二人で過ごす日々が、心安らぐと感じられず、すぐに次の仕事をさがしに面接にいってしまうのだった。どこかで立ち止まって、同じ間違いをただす時間が、必要だったのではという気もする。元カノの言うとおりに休養すべきだったのではないかと