健康診断が終わった

健康診断が終わり、ロッカーのカギと引き換えにコーヒーが貰える。なんでかスターバックスのロゴのはいったカップで汲み取り式のコーヒーを汲んで、カフェのようになっている待合室から八重洲の通りを見おろして考え事をした。

むかしは勤め先が不良債権を抱えていると思っていた。そういう噂があったのだった。その関係のビルがあの辺りにあり、地元にもあった。それをふと思い出した。あの頃は今とは全然違うことを心配していたんだなと思う。結局、勤め先はその後むしろどんどん進化しているように思う。そういう心配はもうしていない。

見下ろす街並みに高そうなオーダーメードのスーツのような姿のおじさんが歩いていく滑らかに翻る。私が着たことのあるようなスーツとは違うものなんだと一目で感じる。金持ちというものだなと思う。高給をもらう人。彼らが、高給をとる根拠はなんだろうと思う。高い学歴なのか、豊富な知識なのか、優秀な仲間との信頼関係なのか。意のままに動かせる人達がいて、思い通りになる事業があるのだろう。自分とは違う人間。雇われているだけの人間とは違う。人をお金で動かす側の人間なのだろう。そのやり方が分かっている人間なのだろう。自分の報酬を自分で決められる側なのだろう。自分はそういう風にはなれない。彼らもまた丸腰になればただのおっさんなのだろうかと思ったりした。

スマホには日経平均が、一時2500円も下がったというニュースが流れる。自分の持ち株もかなり下がっているしかし、私が株につっこんでいる金額はもう貯金全体の5%以下でしかない。どうでもよく、心は穏やかだ。健康診断は朝早かったから、帰っても昼前だ。朝食を食べ、下剤を飲み、今日はバリウムを排出すること努める。

私が治療中の血液検査での症状は、どうも高尿酸血症ということになるらしい。そう診断されたことはないはずだが、健康診断で、治療中とかかねばならずその内容には高尿酸血症と書くのが妥当だと健康診断の診察で言われた。そうしないと検査結果が要精密検査とかそういう記述になるのでしかたないようなのだ。おかしいなとは思う。正確ではないが正確に記載できない仕組みなのだろう。しかたないし、まあ実際に健康状態がどうなのか目安にすることが大事なのであって、健康状態の結果が絶対ということでもあるまいと思うので、納得することにした。

それにしてもいい天気だ。日差しが黄色い。

すべてが、薄い黄色っぽい白に輝いていて懐かしい。こんな日差しに輝いている地面をむかし中学生のころに学校のそばの踏切で見た。それを見たとき私は、学校ではなくどこか別のところに旅に出たいと思ったのだった。どこにも行けなかった。けれどどこかに行きたかったのだった。知らないところ、どこかに行きたい。電車の中で、いま、そんな気持ちになっている。どこにでも行けると思う。本当はどこにでもいけるはずなのだ。