すごく小さな世界で

 すごく小さな世界で、その世界の中で輝いている異性に、自分ががんばっていることを認めてもらえて、興味をもってもらえるということがあればいいなと思っていた。

 元カノはKDPランキングやくまブなどを使ってくれていた数少ない人で、ぼくにとってはそういう人のように思えなくもない。そういう風に当時、うけとめていたかといえばうそになるけれど、少なくとも、むこうも自分のことを多少は知ってくれている人だと思えていた。そういう意味で、特別な存在だった。マッチングアプリで出会うのとはまったく違っていた。

 実際には、お互いのことを知っていると思っていたのは思い込みで、幻想でしか過ぎない部分もあったかもしれないし、一緒に暮らしていくなかでKDPランキングだのくまブだの電子書籍だのはほとんど日常生活では話題にのぼることもなかった。けれど、ほんの短い間でぼくらは、あっというまに血のつながりのような絆を感じて、家族のようにお互いのバイオリズムをシンクロさせていったと思う。恋人を通り越して、一体化していたのだと思う。でも、うまくいくことばかりではなかった。うまくいかないことも多かった。お互いに心が離れていったのはどうしようもないと思う。私は本当にひどいこともした。狂人としか思えないことをした。どうしてそんなことができたのか、と思うようなこともした。だから、自業自得である。ぼくが関係をぶち壊したのだと思う。元カノは優しかった。彼女はかなり傷つけられて、困惑もしたと思う。もう私とやりなおすことはできないと何度も言っていた。私は分からないのか? 私はもう彼女に近づいたり、傷つけたりしてはいけないのだということが、私はまだ分からないのか。