蜘蛛の巣を払う女を久しぶりに観た

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これは好きな作品だ。昔、フリーランスをしていた時の現場のマネージャークラスの女性の方を髣髴とさせるキャラクターだなと思っていた。グリムスパンキーにもハマっていたのだが、グリムスパンキーのボーカルの人はその人の声に似ていると思っていた。その人は一回りぐらいは年上なので、好きだったとかではないのだが、カッコいいなと思っていたのだった。

 

この蜘蛛の巣を払う女の世界観は、私が昔書いていた小説の世界観と似ているところがある。しかし私の小説は比較すると足りないところがある。この蜘蛛の巣を払う女には過去の生い立ちの問題から来る、特殊な人格障害のようなものが描かれていると思う。どうしようもない過去からくる、説明のつかない衝動が描かれている。その異様な衝動が、しかし誰にでも共感できることなのだと言う風に納得させられてしまう。異常な正義感の根底にあったのはかつて妹を救えなかったことからの逃避だったのかもしれない。しかし妹を救えなかったのは、妹が自分ではなく父を選んだからだと自ら口にしたときにその呪縛は終わる。彼女は過去の象徴であるかつての家を放火する。一つ一つの行動だけをみればそれは逸脱的で非常識に思える。しかし物語をたどっていくとその逸脱は実は筋が通っていることが分かる。むしろ正常だからこそそうなるのだ。そういうものが描かれている、そういうものが描けるということが物語のすごさなのだと思う。私が書いていた小説には、そういう人間に対する洞察というものがなかったし、人間を描くことが出来ていなかったと思う。それがないと、すべてが飾りのようなうわべだけのものになってしまう。そういうところが、自分の未熟さだったのかもしれない。