あの頃、私は、自分の頭が、薬でコントロールされていると感じられていた。気分や記憶、思考が薬によって強制的に変わるのを実感していた。副作用で、判断力も左右される。ギャンブルに走りやすくなるという謎の副作用が記されていた。薬を止めれば、判断や思考は、完全に自分のものになるだろうとも期待できた。しかし、正常な判断とか、正気の状態というのは、むずかしいものだということがどんどん明らかになってきたと感じる。私は薬もアルコールもなくても、判断力を色々なものによって左右されている。認知バイアスや、怒りや欲望によって、判断力が狂い、長期的には意味がないことを短期的に求めてしまう。うまいものを食べるとか、自分へのご褒美とかは、必要だと思うのだが、それは長期的には、ただ損失でしかないようにも思える。酒を飲んでしまう事と、ほとんど同じ構造で買い物依存などへとつながっていく可能性もある。
人間は根本的な動因が性欲、つまり繁殖欲だというのだから、論理的なフリをしても、基本的には狂気にとりつかれている。根っこが論理ではないものによって動機づけられているのに、論理的に正しい判断ばかりとれるはずもない。そんなことを考えてしまう。どこまでいっても、狂った状態というのは、なくならないのではないかと思ってしまう。そう考えると、本当に地獄だと思う。