漫画家になりたかった

むかし、漫画家になりたかった。

家で仕事をしたかった。

サラリーマンになれるとは思えなかった。

漫画の後書きみたいな所に書かれている漫画家の暮らし方以外に、世間の人がどう暮らしているのか知りもしなかった。

FF7をやって、ゲームを作ることが世界を作ることのように思えて、ゲームを作る人たちを尊敬した。

インターネットをするようになり、

ホームページを作ったりした。インターネットの世界では、作る人が一番偉いと思えた。インターネットを作っている人たちが作る世界が、次の世界になっていくのだと思った。

そういう世界を引っ張っている人たちは、医者でも弁護士でもないし、東大卒でもなかった。マッチョでもイケメンでもなかった。

自分もそういう世界でなら生きられるのではと思った。インターネット上で情報が得られやすい言語のほうが、プログラミング言語の中で人気が出てきた。コンピューター科学を学ばなくても、最先端の仕事ができるチャンスも高くなっていった。

IT技術が、専門家のものから、誰でも調べれば学べるものになっていった。グーグルが登場しコピペして修正すればなんでも作れるようになっていった。

未経験からエンジニアに転職できるケースが増えていった。

むかしは人がいないころは

エンジニアは尊敬され本人にコミュニケーション能力がなくてもまわりのほうが合わせてくれたのだろう、変な人が多かった。今は、エンジニアは割と誰でもなれる仕事になってきて、他の職業と同じように、魅力やコミュ力や学歴で評価されるようになっていった。普通のサラリーマンの仕事になっていったのだ。

元々はエンジニアというのは変わった人も多く生き残れる職業だったかもしれないが、今はそういう変わった人たちを普通のサラリーマンに交代させていく時代になってきているのではないかといういう気がする。

エンジニアだけでなく、イラストや、映画や、作曲などオタクが人としてダメなところがあっても食べていける道だった世界。それらがすべてAIの狩場になった。

むかしは食べていけた職人たちが、今はお払い箱になった。

でもそれは、駅前商店街が郊外のイオンに奪われるのと同じような、必然的な流れなのかもしれない。土着的なものが都会化し、ズブズブの人間関係や助け合いが、断捨離される一時的な相互フォローに変わったり。

一時的にバランスが崩れていたものが、すぐに無理ゲーに戻っていく。弱肉強食の競争社会にもどっていく。その中で、一時的にオアシスをみつけた弱者である我々はまた行き場を追われて当てどない放浪へとさすらう。